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007 ユア・アイズ・オンリー』(ダブルオーセブン ユア・アイズ・オンリー、For Your Eyes Only)は1981年公開、ジョン・グレン監督のスパイアクション映画007シリーズ第12作。また、原題はイアン・フレミングの007シリーズ第1短編集 (日本語タイトルは『007号の冒険』)と、同書収録の短編(『読後焼却すべし』)のタイトルでもあり、本映画の原作としてはその他同書の『危険』が使用されている。

小説 編集

"For Your Eyes Only"イアン・フレミングの小説007シリーズ第1短編集(単行本としては8冊め)で、1960年、ジョナサン・ケープ社より出版された。日本では1964年に『007号の冒険』のタイトルで、東京創元社から井上一夫訳により発売され、2007年に改訳版が『007/薔薇と拳銃』のタイトルで発売された。

収録作 編集

バラと拳銃 (薔薇と拳銃)- From a View To A KIll
映画『007 美しき獲物たち』の原作。
読後焼却すべし - For Your Eyes Only
本短編集の表題作。本映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の原作。前半部のエピソードに使われている。
危険 - Risico
本映画『007 ユア・アイズ・オンリー』のもう一つの原作。中盤のエピソードに丸ごと使われている。
珍魚ヒルデブランド - The Hildebrand Rarity
登場人物が映画『007 消されたライセンス』に使用された。"PLAYBOY" 1960年3月号掲載。
ナッソーの夜 - Quantum of Solace
映画『007 慰めの報酬』の原作。"COSMOPOLITAN" 1959年5月号掲載。

映画 編集

ジョン・グレン監督の1作目として、これまでの推理小説的、あるいは特撮作品と打って変わって大胆なスタントシーンで構成され、スーパーアクションムービーとなった作品。オープニングのヘリコプター・空中スタントから、カーチェイス、スキーアクション、銃撃戦、そして水中での格闘、ロック・クライミングと、スリリングなシーン満載の大作。SF映画の様な前作ムーンレイカーから007の原点へ軌道修正されたシリーズ中傑作の一つである。

スタッフ 編集

キャスト 編集

ストーリー 編集

アルバニア沖で潜水艦核ミサイル攻撃を指令するATAC送信機を装備した電子監視船セント・ジョージ号(St. Georges, Valletta)の網に機雷がひっかかり沈没する。

調査を依頼された海洋考古学者・ハブロックとその妻。だが二人は帰省してきた娘、メリナの目の前で殺害される。

ハブロックの死により、何者かがATAC送信機を狙っているとかぎつけた英国情報部はボンドを派遣し、ハブロック殺害犯とその黒幕の調査を命じる。

一方、両親を殺されたメリナは、その復讐を果たそうとボンドの前に現れる・・・ボンドはATAC送信機を奪回できるのか?

興行成績 編集

本作は1981年の映画の世界興行成績で、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に次ぐ第2位を記録した。日本では1981年度の外国映画配給収入で『エレファントマン』(23億1000万円)に次ぐ第2位(21億5200万円)で、日本映画の第1位『連合艦隊』(19億円)を上回った。

エピソード 編集

  • 主題歌「For Your Eyes Only」は1980年代に一世を風靡したシーナ・イーストンが歌っているが、これを歌う本人がオープニング・タイトルに登場する。シリーズを通じて主題歌を歌う本人がオープニング・タイトルに登場するのは、本作におけるイーストンが唯一の例である(ただし第20作『ダイ・アナザー・デイ』では、主題歌を歌うマドンナが本編中に端役でカメオ出演している)。
  • 主題歌候補として「For Your Eyes Only」は他にブロンディ(詞も曲も異なる)が歌っているが、最終選考でイーストンに敗れた。
  • M役のバーナード・リーが撮影前に逝去したため、彼への敬意を示し、今作ではMは登場しない(休暇中という設定)。
  • ボンドガール役のキャロル・ブーケは前作『ムーンレイカー』の撮影スタジオを見学に行った際にこの作品のヒロイン役に抜擢された。
  • トポルは、パーティの席でブロッコリの妻ダナにコロンボ役を指名された。
  • クリスタトス役のジュリアン・グローヴァーは、かつてジェームズ・ボンド役の候補になったことがある。
  • 本作では、クロスボウを持った女性が両脚を開いて立ち、その脚の間の向こう側でボンドが銃を構えているポスターが作られた。その女性はシチェーションから考えるとキャロル・ブーケに思えるが、後ろ向きで上半身は写っていない。実際は誰であるか取りざたされた末、ニューヨーク生まれのジョイス・バートル(当時22歳)であることが明らかになった。
  • ゴンザレスがくつろぐプールにいる女性たちの一人を演じたテューラは、その後性転換した元男性であることが判明した。
  • 大勢が食事するテラスのテーブルの上を、ジャンプしてきたボンドがスキーで滑走してめちゃくちゃにする。このとき、ワイングラスを片手に驚いて立ち上がる男は、助監督のビクター・トジャンスキー。彼は『私を愛したスパイ』、『ムーンレイカー』でも同様の趣向で登場し、今回が最後となった。
  • オープニングでボンドは妻トレーシーの墓参りをする。彼女は『女王陛下の007』でダイアナ・リグが演じ、エンディングでボンドと結婚式を挙げるが、その直後に仇敵スペクターの首領エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドによって殺された。墓標によると、1943年生まれ、1969年(『女王陛下の007』の公開年)没となっている。
  • 続く場面でボンドを窮地に陥れるのは、スキンヘッドでペルシャ猫を抱いた車椅子の男。どう見てもブロフェルドのように思えるが、劇中では一切名前が出ず顔も写らない。これは、『サンダーボール作戦』の映画化権を持つケヴィン・マクローリーが、スペクターとブロフェルドの著作権が自分にあることを主張していたためである。ボンドはこの男を、ノース・テムズ・ガス・ボード社の建物の煙突の中に落下させ、以後シリーズにはブロフェルドらしき人物は登場していない。一方、マクローリーは1983年にショーン・コネリーの主演で『サンダーボール作戦』をリメイクした『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を製作し、スペクターとブロフェルドを登場させた。

監督ジョングレンは、『女王陛下の007』の編集を務めており、トレーシーの墓参り、スキンヘッドの首にギプスをした車椅子の男との対決は当作品へのオマージュではないかと推測される。

  • 伯爵夫人リスル役のカサンドラ・ハリスは、後に5代目ボンド役を務めたピアース・ブロスナンの妻だった。

秘密兵器 編集

本作は秘密兵器に頼らないボンドを描くという意図から、その登場は極めて少ない。

  • ボンドカーとしてロータス・エスプリターボが使用されたが、本格的なカーチェイスを行うのは、シトロエン・2CVである。本作に登場する2CVは、撮影用に、本来の水平対向2気筒エンジンの代わりに上位車種のGS用の水平対向4気筒エンジンを搭載している。
    • ロータス・エスプリ・ターボの一台目は、「盗難防止装置」のため、ガラスを割られただけで自爆してしまう。
    • 二台目は当初Qの研究室に置かれており、後の場面でボンドが同乗したフェラーラにボタンをさわらないよう注意することからも、何らかの特殊機能は備えていたものと思われるが、活躍はせずに終わる。
  • セイコーの腕時計「セイコー ハイブリッド」を着用。衛星回線による通信機能を備え、音声通信と液晶ディスプレイへのメッセージ表示が可能。エンディングでは、女性首相(当時はマーガレット・サッチャーがイギリスの首相だった)からの通信が入るが、ボンドは毎回恒例の理由で黙殺する。この他に、同社の「ダイバープロフェッショナル」も使用されていると見られる[1][2][3]
  • ロックの身元を割り出すのに、Qが開発中の「3-D・ビジュアル・アイデンティグラフ」を使用。モニターを見ながら対象者の立体画像を作成し、インターポールCIAモサッド、西ドイツ警察などのファイルと照合できる。
    • この装置のある部屋に入る扉の暗証コードは、『私を愛したスパイ』の主題歌 "Nobody Does It Better" の最初のフレーズである。
  • この他に、Qの開発中の秘密兵器として以下のものが登場。
    • 男が片腕にはめたギプスが、横ざまに半回転して人形の頭を打ち砕く。
    • 人形が差した雨傘に水をかけると、刃が飛び出して傘が閉じ、人形に突き刺さる。それを見たボンドは、"Singing in the Rain"(『雨に唄えば』)をもじった駄洒落を言い、Qの不興を買った。

主題歌 編集

当時、イギリスの新人女性シンガー、シーナ・イーストンが起用される大抜擢だった。同主題歌は、イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位8位、アメリカの「ビルボード」誌では、最高位4位と、両国でトップ10入りを果たし大成功だった。映画「ロッキー」のサウンドトラックを手がけたビル・コンティが担当した同サウンドトラック・アルバムは 、「ビルボード」誌アルバム・チャートで最高位84位だった。

その他 編集

  • “ Eyes Only” なら「見て読む以外不可(複写等不可)」の意味の慣用句で、極秘文書に使われる。原作の邦題「読後焼却すべし」や「他言無用」が意訳として適切である。原題 “For Your Eyes Only” は、「あなただけに見て欲しい」という女性からの性的誘惑も暗示したダブル・ミーニングとなっている。ボンド映画の世界観を端的に表現した秀逸なタイトルといえる。
  • ボンドがギリシャ、メテオラの絶壁から蹴落とされて宙吊りになる場面では『私を愛したスパイ』のオープニングで英国旗のパラシュートダイブを行った、リック・シルベスターがスタントを担当した。
  • そのメテオラでは当初、「エロと暴力に満ちた007映画」ということで修道僧達の反発をまねき、修道院の屋根に撮影反対を訴える派手な布が覆い被せられていた。
  • 縄で縛られ海をボートに引きずられるシーンは、フレミングの小説『死ぬのは奴らだ』のラストシーンを参考にした(当然ながら映画版『死ぬのは~』にそのシーンはない)。
  • 本作に出てくる潜水艇ネプチューン号は、プロダクション・デザイナーのピーター・ラモントがデザインし、『私を愛したスパイ』でロータス・エスプリの潜水モデルを製作した、ペリー・オーシャノグラフィック社が製造した。
  • 沈没船でボンドたちを襲う一人乗り潜水艇は、イギリス、オーゼル(OSEL:Offshore Submersible)社のマンティス(MANTIS)。
  • 潜水用具の提供は、スキューバプロ社。
  • ボンドの履くスキー板は、オーリン・マークVI。ビンディングはチロリア。スキーブーツはガルモント。
  • スキーウェアの提供は、ドイツのボグナー社。その創業者の息子ウィリー・ボグナー(Jr.)が、『私を愛したスパイ』に続きスキー・アクション・スキーの撮影を担当。
  • イタリア、コルティナダンペッツォの街中と雪山でボンドを襲うオフロード・バイクは、ヤマハ・XT500。公開当時、同型のXT250が上映劇場に展示されたり、特番に登場したりした。
  • オープニングでボンドを迎えに来るヘリコプターには、Universal Exports(ユニバーサル貿易)と書かれているが、これは007シリーズの英国情報部が隠れ蓑としている会社名。
  • メリナの両親が殺される場面や、ボンドとロックの対決シーンなどは、ギリシャのコルフ島で撮影された。カジノのシーンは、同島にオーストリアのエリザベート皇后が建てたアレキオン宮殿が使われた。シトロエン・2CVのカーチェイス・シーンは、スペインのマドリッド近郊という設定になっているが、実際はこれもギリシャで撮影された。
  • 雪山のロケが行われたコルティナダンペッツォは、1956年の冬季オリンピック開催地で、スケート・リンクやスキーのジャンプ台などでも撮影が行われた。本作の公開時、007映画最大の市場であるアメリカでは、レークプラシッドオリンピック開催の翌年にあたり、ウィンター・スポーツへの関心が高い時期だった。
  • ソ連KGBのゴゴール将軍の乗るヘリコプターは、ソ連が開発しポーランドで生産されたMi-2が使用された。
  • ボンドとゴゴール将軍とは、前二作『私を愛したスパイ』と『ムーンレイカー』では曲がりなりにも協調路線を歩んできたが、本作ではATACの争奪戦を繰り広げる。2年前の1979年にソ連のアフガニスタン侵攻が起こり、翌1980年には、アメリカを始めとする西側諸国がモスクワオリンピックをボイコット(ただしイギリスは参加)するなど、東西の緊張が高まっていたことが背景にあるが、エンディングではデタントの期待が描かれている。ゴゴール将軍は、前々作で顔を合わせているはずのボンドを、なぜか今回の取引相手であるATAC奪取の一味と勘違いして、堂々と手を差し伸べている。
  • 監督ジョン・グレンのシンボルは鳩。彼の監督した007シリーズには、鳩の登場シーンがある。本作では、ボンドがメテオラの断崖を登る際、岩陰から急に飛び立ち彼を驚かす。

日本語吹き替え 編集

役名 俳優 テレビ版 DVD新録版
ボンド ロジャー・ムーア 広川太一郎
メリナ キャロル・ブーケ 戸田恵子 沢海陽子
コロンボ トポル 小林清志 水内清光
ビビ リン=ホリー・ジョンソン 潘恵子 武田華
クリスタトス ジュリアン・グローバー 穂積隆信 有本欽隆
リスル カサンドラ・ハリス 沢田敏子
ロック マイケル・ゴサード 阪脩
ゴゴール ウォルター・ゴデル 中庸助 島香裕
Q デスモンド・リュウェリン 北村弘一 白熊寛嗣
ルイジ・フェラーラ ジョン・モレノ 納谷六朗
ゴンザレス ステファン・カリファ 石塚運昇
タナー ジェームズ・ヴィリアーズ 阪脩
グレイ ジェフリー・キーン 宮内幸平 佐々木省三
車椅子の男 ジョン・ホリス 加藤精三
翻訳 - 木原たけし、演出 - 小山悟、調整 - 小野敦志
  • DVD新録版 - 2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
翻訳 - 谷津真理、演出 - 福永莞爾、調整 - 金谷和美

参照 編集

関連項目 編集